抗原性とは?食品別強さの違いや、調理法による残存率の違いと強さについて

抗原性について

鶏卵アレルギーの抗原性について調べたことをまとめています。

鶏卵アレルギーの抗原性は加熱により低下されることが認められています。

単純に食品に含まれている卵の分量だけでなく、この抗原性の強さでアレルギーの症状の出方が全く変わってきます。

例えば生卵は最も多く、マヨネーズやアイスクリームなど非加熱のものは、アレルギーを持つ皆さんが気を付けている通り抗原性が強くなります。

お勧めの本

抗原性の強さの順リスト

「食物アレルギーの基礎知識」から引用

強さの順 分類 食品
本からの引用 同レベルの
強さの食品
(その他から引用)
1 生卵
生卵に近い物
生卵、
マヨネーズ、
アイスクリーム、
メレンゲ
2 半熟卵 オムレツ、
たこ焼き、
お好み焼き、
丼物
プリン、
ミルクセーキ、
卵ボーロ
3 卵の加熱したもの 卵焼き(だし巻き)、
薄焼き卵、
茶碗蒸し、
かき卵汁、
スクランブルエッグ
バウムクーヘン、
蒸しパン
4 卵の入った料理 ハンバーグ、
天ぷら(衣)、
とんかつ
ウインナー
5 お菓子 カステラ、
クッキー
ドーナツ、
パン、
天ぷら
6 つなぎに使った
練り製品
ちくわ、
かまぼこ、
ウインナー、
ラーメンの麺、
うどん(つなぎ)
7 鶏肉 鶏肉、
チキンエキス、
チキンコンソメ
原材料中の
卵殻カルシウム

この抗原性の強さを正確な数値にすると、生卵と加熱された卵では相当な差があります。

強さのレベルが③以上のものは強いと考えておく必要があり、⑤以下のものはかなり低い方です。

天ぷらもクッキーなどと同じレベルにされている場合もあります。

⑦の鶏肉については、アレルギー検査の数値がかなり高いお子様以外はほとんど除去していないと思います。

症状の重い子で、鶏肉も除去したら良くなったという例もあるようです。

原材料に含まれる「卵殻カルシウム」も重症の子以外は基本的に除去が不要で、鶏肉と同じ部類に入ります。

卵殻カルシウムと鶏卵アレルギーについて詳しくはこちら

ハム、ウインナーベーコンなどの鶏卵の含有量はかなり少量ですが、ハムはそのまま食べる為加熱温度と加熱時間が気になると思います。

これらの製品には「加熱食肉製品」と記載があり家庭で加熱しなくても食べれるとさせていますが、厚生労働省によると、中心部63℃で30分、これと同等以上の加熱殺菌とあります。

その中心部の温度を 63°で 30 分間加熱する方法又はこれと同等以上の 効力を有する方法(魚肉を含む製品であって気密性のある容器包装に充てんした 後殺菌するものにあっては、その中心部の温度を 80°で 20 分間加熱する方法又は これと同等以上の効力を有する方法)により殺菌しなければならない 厚生労働省ホームページより(PDF)

加熱・調理法による抗原の残存率

鶏卵アレルギーの症状の出方は、加熱によりかなり変わるということが分かります。

鶏卵の主な抗原は卵白中に存在し、そのなかでも卵白たんぱく質の約54%を構成する卵白アルブミン(OVA)と、約11%を構成するオボムコイド(OM)が重要です。

この卵白アルブミン(OVA)とオボムコイド(OM)はともに、加熱調理時間が長いほどアレルギーを起こしにくくなりますが、加熱による影響の受け方は違います。

調理法による卵白アルブミン(OVA)とオボムコイド(OM)の残存率

この表は「食物アレルギーの基礎知識」という本から一部引用しました。

生卵と比較した
抗原残存率
備考
OVA
(卵白アルブミン)
OM
(オボムコイド)
生卵 100% 100%
温泉卵 91.06% 14.36% 加熱温度が低いとOVAは下がらない。
加熱時間が長い分OMは下がる
炒り卵 9.32% 15.07%
卵焼き 7.22% 28.72% 加熱時間が短いので
OMが下がりにくい。
薄焼き卵、
綿糸卵
0.76% 14.53%
12分固ゆで卵 0.01% 11.77%
20分固ゆで卵 0.005% 6.12% 加熱時間が長いので
OMは下がりやすい。

70℃で、30分間加熱で作った温泉卵では、卵白は十分に凝固しておらず、OVAは生卵と同じくらい残っていたそうです。

それにくらべOMは他のものと同レベルまで下がっています。

これにより、OVAは高温で良く加熱することで下がり、OMは加熱時間が長くすることにより下がることが分かります。

ゆで卵およびハンバーグ中の全卵5g当たりの鶏卵抗原量

「食物アレルギー外来診療のポイント63 改定第版」より引用

調理条件 OVA
(卵白アルブミン)
OM
(オボムコイド)
生およびゆで卵 生卵 1052mg 850mg
12分ゆで卵 120μg 100mg
20分ゆで卵 55μg 52mg
ハンバーグ 生地 1430mg 900mg
フライパンで
両面蒸し焼き
10分
691μg 41mg
両面蒸し焼き10分

煮込み15分
91μg 14mg

※全卵5g以外に牛肉50g、炒めタマネギ16.5g、パン粉2.5g、調味料・香辛料1gを含む。煮込みハンバーグでは煮汁中の抗原も含む。

この表からも、煮込み時間を長くすることでOMの量がかなり減っていることが分かります。

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卵ボーロは鶏卵アレルギー児に危険?抗原量は調理における副材料でもかなり変わる

「食物アレルギー外来診療のポイント63 改定第版」より引用

鶏卵と副材料を合わせて焼く種々の卵菓子において検討した結果、副材料とあわせるとOVA,OMはほぼ同等に加熱による影響を受けるようになり、OVAの抗原性もOMと同等あるいはそれ以上に残ることが明らかとなった。OVAが加熱による凝固の影響を受けにくくなると同時に、OMの不溶化が起こるためと考えられる。特に小麦粉を用いたパンや菓子類では、小麦粉中のSH基が鶏卵のSS基と交換反応を起こし不溶化すると同時に加熱による変性を受けやすくなることが知られている。

卵入り焼き菓子であるボールとビスケットのうち、新法FASPEKのデータからほぼ同量の鶏卵が使用されていることが確認された製品1g中のOVAとOMを従来法によって測定してみると、副材料として小麦粉を用いたビスケットの抗原性は、片栗粉を用いたボーロの抗原性の約10分の1であり、小麦粉中のSH基による効果であると考えられた。このように、副材料の選び方によっても食品中の鶏卵の抗原性を低減化することが可能であることが分かった。

何だか分かりにくいけどようするに、

副材料として小麦粉を用いたビスケットの抗原性は、片栗粉を用いたボーロの抗原性の約10分1

同じ鶏卵の含有量で同じような加熱量でも、副材料によって抗原性が全く違うということです。

こういった抗原性も考えておかないとかないと心配です。

例えば、パンで鶏卵の含有量10gまで制限解除されたお子様が、卵ボーロで同じ10gを食べさせてしまうのはとても危険です。

卵ボーロの鶏卵の含有量としては1粒あたり0.05g以下なのでかなり少量ですが、安易に食べされるのは止めた方がいいかもしれません。

焼き菓子およびパン1g中の卵白抗原量

下の表は、同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科 教授 伊藤節子先生の講演による内容で、

調理・加工による食物アレルゲンの変化を踏まえた食事指導(pdf)」からの引用です。

従来法 FASPEK

(卵白アルブミン)

卵白アルブミン オボムコイド
卵ボーロ1 7.0mg 7.6mg 9.4mg
卵ボーロ2 4.6mg 6.5mg 13mg
卵入りビスケット1 390μg 760μg 10mg
卵入りビスケット2 36μg 14μg 2.1mg
卵入りビスケット3 28μg 12μg 3.2mg
バターロール1 80μg 130μg 6.6mg
バターロール2 1.1μg 5.2μg 0.25mg

原材料としてほぼ同じ量の卵を含む卵ボーロとビスケットでも摂取時の抗原性の強さはかなりの差があります。

また、同じような条件で焼かれた焼き菓子でも抗原性は副原料により異なってくることが分かりました。
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備考

みなさん気にしていると思いますが、加熱の具合はかなり重要になると思います。

加熱卵しか食べれない方は生卵、マヨネーズ、アイスなどは特に避けていますよね。

でも卵ボーロの抗原性が強いなんて医者は教えてくれないので以外でした。

量としては極少量なので食べ過ぎなければ大丈夫だとは思いますが。

卵ボーロの含有量に関してはこちらを参考にして下さい。