目次
原材料に記載されている『乳糖』 蛋白質の残存は?アレルギーでも無視できる? 乳糖を使った食物経口負荷試験論
乳糖??
乳糖って本当に除去不要なのか曖昧です。
乳糖について調べると良く書かれているのは、『ごく微量(数μg/g)のたんぱく質』とか、『医師に相談して』とかばかりです。
『医師に相談して』というのは正しいことなんですが、実際どれくらいの乳蛋白質が含まれるのか調べてみました。
アレルゲンとなるのは蛋白質ですので、蛋白質が全く含まれなければ除去不要ですし、蛋白質量が分かれば牛乳の量へ換算でき、除去の必要があるのか判断しやすくなります。
牛乳を飲むとお腹を壊して下痢をするという場合は、アレルギーとは別で『乳糖不耐症』の可能性もあります。
スポンサーリンクそもそも乳糖とは何?
参考サイトから
乳糖は蛋白質などが除去された、牛乳に含まれる炭水化物なんですね。
乳糖は牛乳に含まれる炭水化物
牛乳に含まれる炭水化物のほとんど(99.8%)が乳糖ということが分かりました。
糖質制限をしてる方などは良くご存知と思いますが、『炭水化物=糖質+食物繊維』です。
文部科学省「日本食品標準成分表」を見てみました。
食物繊維は当然「0g」ですので、牛乳の約4.8%が炭水化物で、そのほとんどが乳糖ということになります。
牛乳のパッケージに書かれた栄養成分表を見ても分かりますね。
重容なのは蛋白質量
牛乳に限らず、アレルゲンとなるのは蛋白質です。
牛乳アレルギーの方で、決められた量で摂取可能な患者さんは『蛋白質の量が大切』だと医師から説明されていると思います。
製品により多少異なりますが、牛乳には蛋白質が約3.3%含まれます。
10mlの牛乳を飲むことができる場合、約0.33gの乳蛋白質が摂取できるということになります。
乳糖はたんぱく質などが除去されたものなので「0g」に近いものですが、微量の蛋白質が残存するようです。
コンタミレベルでも症状が出てしまうような重度なアレルギーの場合は、乳糖も除去と指導される場合が多いかと思います。
実際にはどれくらいの量の乳蛋白質が含まれているのか、信憑性のある情報を探してみました。
食品用乳糖にはどれくらいの乳たんぱく質が残存してる?
なかなか信憑性のありそうな記事がなくて探すのに結構苦労しましたが、消費者庁の食品表示法等(法令及び一元化情報)にありました。
『食品表示基準Q&A』の中に記載があります。
食品表示基準Q&A(総合版PDF)
消費者庁 食品表示企画課
該当箇所のみのPDF
このP60~P61に記載されている内容を引用したのがこちら
平成13年3月21日付食企第4号、食監発第48号のQ&A、『乳糖は精製が完全であり蛋白質の残存がなければ、抗原性がないとの見知があるため特定原材料表示は必要ありません。』と記載しており、乳糖は精製が完全であること、及び蛋白の残存が見られないものについては、アレルギー表示は不要とされました。
この時点ではアレルギー表示が不要だったようですが、この後の改定に肝心なことが書かれてました。
乳糖の精製度については、乳糖関係数社よりデータの提供を受け、
アレルギーを起こさないと考えられていた「精製が高度な乳糖」についても、たんぱく質が残存していること一般に市場に流通している「精製が高度な乳糖」についても、たんぱく質が0.3%程度残存することが判明しました。
たんぱく質が0.3%程度残存することが判明しました
消費者庁 食品表示企画課による『食品表示基準Q&A』が作られたのが、平成27年3月(最終改正 令和元年9月19日)ですが、乳糖についての表示基準が決められたのは平成13年のようです。
かなり前ですね。
現在は技術の進歩でさらに高度な精製がされてるかな?なんて思ったりもしますが。
0.3%となると、バターの半分くらい、マーガリンと同じくらいの量になります。
食物アレルギー研究会のホームページでは『数μg/gの蛋白質』と書かれていたりもしたので思っていたより多かったですが。
牛乳に比べると1/11の量です。
仮に牛乳を1g飲めるアレルギー患者の場合は、乳糖を11g摂取可能となります。
仮に乳糖が10g含まれている食品を食べた場合は、牛乳に換算すると約0.9g(0.88ml)となります。
医薬品の乳糖は0.1%だそうですが、これについては後半で書きました。
乳糖を使った食物経口負荷試験(論文)
日本小児アレルギー学会誌の論文がありました。
論文の内容まとめ
- 即時型牛乳アレルギー児を対象に、食品用乳糖3gを摂取した食物経口負荷試験42例
- 対象は重度なアレルギー患者が多く、乳特異的IgE抗体価は61.7Ua/ml(10.4-293)と高い郡(クラス5以上)
- 42例中19例(45%)に牛乳に対するアナフィラキシーの既往歴
- 年齢中央値は53か月(4~5歳)
- 明らかな客観症状を陽性
- 軽微な客観症状や主観症状は判定保留
- 陽性は2例(5%)で,それぞれ嘔吐や局所の蕁麻疹を認めるのみ
- 今回の検討から即時型牛乳アレルギー児の多くは乳糖の摂取が可能であることが明らかになった
- 乳糖の食物経口負荷試験では重篤な症状の出現は認めず、この食物経口負荷試験を安全に施行することができた
- 乳糖を除去している牛乳アレルギー児に対しては乳糖の摂取が可能であることを確認することが望ましい
即時型牛乳アレルギー児の多くは乳糖の摂取が可能であることが明らかになった
食物経口負荷試験は大切ですね。
この論文は全て読むことができないので、小児アレルギー科医のブログに書かれた内容も一部参考にしています。
この先生は論文を全て読んでいると思われ、下記の内容が書かれています。
『食品用乳糖と医薬品乳糖では、乳蛋白質量が異なることがしられており、この論文内では、食品用乳糖は0.3%、医薬品乳糖は0.1%と報告されているとしてます。』
医薬品乳糖の蛋白質量
先ほどの、小児アレルギー科医のブログに書かれていたのが、『食品用乳糖は0.3%、医薬品乳糖は0.1%の蛋白質量』ということでしたが、もう少し詳しく調べてみました。
国立医薬品食品衛生研究所報告の、『医薬品添加物に含まれる食物アレルゲンタンパク質に関する研究』に書かれています。
医薬品添加物に含まれる食物
アレルゲンタンパク質に関する研究(PDF)
かなり細かく書かれており、全部読むにはかなりきついです…。
重要な点を引用したのがこちら。
乳糖については,医薬品添加物及び医療用医薬品の両方ともに,1 mg/g程度のタンパク質が検出された.
食品用乳糖の「0.3%」という値と比較した場合,医薬品添加物としての乳糖の精製度は,より高いことが示唆された.
医薬品添加物及び医療用医薬品の両方ともに,1 mg/g程度(0.1%)のタンパク質
乳糖を使用した薬の例
「ソル・メドロール」、「ソル・メルコート」、「ザナミビル」、「ラニナミビルオクタン酸エステル水和物」などがあります。
ソル・メルコートが投与された乳アレルギーの患者がアナフィラキシーを起こし、薬に含まれる乳糖が原因となった可能性が高いという報告もあります。
乳糖を使った食品の例
味の素(株)のホームページに『アレルギー物質の「乳成分」が、原材料の「乳糖」に由来する商品』のページがありました。その中の一部がこちら
- 「ほんだし」
- 「鍋キューブ」鶏だし・うま塩
- 「丸鶏がらスープ」〈塩分ひかえめ〉
- 「Rumic」ミートソース用
- 「クノール 中華スープ」コーンのスープ
- 「味の素KKコンソメ」
これらの商品と、リンク先ページの商品は「乳成分使用」とされていますが、乳糖しか含まれません。
コーンのスープのように、原材料名の中に「乳糖」と書かれており、 さらに「原材料の一部に乳成分を含む」と書かれている商品もあったので味の素(株)に問い合わせたところ、乳糖のみだそうです。(味の素に確認)
1食分当たりに含まれる乳糖はかなり少量になるでしょうから、乳アレルギーでも除去する必要のある患者はかなり稀かと思われます。
この他にもパンやお菓子類、ハムなど、乳糖が使われている食品はたくさんあります。
「原材料の一部に乳成分を含む」しか書かれておらず、それが乳糖の場合もあるので、除去不要と分かれば食の幅が広がりそうですね。
最近では乳糖しか含まれない「幸楽苑」のらーめんも紹介しました。
このように、乳成分を含むと分かっていても、それが乳糖のみだと分かれば食べれるものがかなり増えるはずです。
牛乳を飲むとお腹がごろごろ・下痢をする? 乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)はアレルギーとは違う
「牛乳を飲むとお腹がごろごろする、下痢をする」という話を聞いたことがあると思いますが、アレルギーではなく乳糖不耐症の可能性があります。
乳糖不耐症については参考になるサイトが多いのであまり詳しく書きませんが、
『乳糖を十分に消化できず、下痢などの症状を引き起こす疾患が乳糖不耐症で、免疫を介するアレルギー反応ではないため、アレルギーとは言いません。』
お子様が初めて牛乳を飲んだ時にお腹がゆるくなり、アレルギーかな?と思った場合、アレルギーではなく乳糖不耐症の可能性もあります。
逆に、下痢をした子供に乳糖不耐症だろうと思い込んで「少しなら飲ませても大丈夫だろう」と不用意に与えてしまうのは危険ですね。
雪印メグミルクではおなかがゴロゴロする人へ向けた『アカディ』という、乳糖を8割カットした牛乳も販売しています。
まとめ
乳糖についてのまとめ
- 牛乳に含まれる炭水化物(糖質)の約99.8%が乳糖
- 乳糖はホエイから蛋白質などを取り除いたもの
- 食品用乳糖には0.3%の乳たんぱく質が残存
- 医薬品乳糖には0.1%の乳たんぱく質が残存
- 即時型牛乳アレルギー児の多くは乳糖の摂取が可能
- 乳糖を除去している場合は摂取可能であることを確認することが望ましい
乳成分の含有量が分かっていて、それを牛乳の量に換算したい場合、こちらの計算ツールを使うと簡単です。ツール④に乳糖を追加しました。
食物アレルギーを持つお子様達、大人も含め、今よりもっと食べれる物を知る機会が増えますように。
そのような環境が整いますように。